あなたにぴったりの牛乳は?

牛乳がわかるQ&A

牛乳とライフステージ

  • 36.乳幼児期の牛乳摂取で注意することは?

    乳幼児期は丈夫な歯と骨格をつくる大切な時期ですから、多くのカルシウムが必要です。 日本人の食事摂取基準(2010年版)では、1〜2歳児のカルシウム摂取の推奨量は1日あたり男児430mg、女児412mgで、体の大きさが違う成人(30〜49歳・男性667mg、女性660mg)と比較すると、相対的に多いことがわかります。 牛乳・乳製品は、カルシウムの補給源として重要なだけではなく、栄養バランスのとれた食品として幅広く摂取されています。
    一方、牛乳は、カルシウムとリンの含有量が多いため、腸における鉄の吸収を抑制します。さらに、1歳未満の乳児に与えた場合、消化管出血の起こることが知られています。これは、消化管が未成熟のためで、これらにより鉄欠乏症になる可能性があります。したがって、乳幼児期の牛乳そのものの摂取は、少なくとも生後1年を過ぎてからが望ましいとされています。
    なお、消化管が成熟してくる1歳以降では、離乳食からも鉄を多く摂取できるようになるため、通常の範囲での牛乳摂取で問題になるようなことはありません。また、鉄を強化した フォローアップ・ミルクを使用するのも1つの方法です。
  • 37.乳幼児の中耳炎に牛乳は関係している?

    中耳炎は乳幼児に多くみられる一般的な病気です。海外のデータでは、2歳未満では80%がかかり、また3分の2の子どもは、3歳までに少なくとも1回はかかるといわれています。乳幼児の中耳炎の発症には、上部呼吸器感染、耳管の機能不全、外的な要因として家族による喫煙など、さまざまな要因が関与していますが、牛乳と中耳炎の発症には直接的な関係はありません。
    1つの要因として授乳する際の乳児の姿勢が考えられています。中耳炎は、鼓膜の奥(中耳腔)に細菌が入り込み炎症を起こす病気です。海外では1〜2歳時における中耳炎の平均罹患期間は、12ヶ月齢まで母乳栄養であった子どものほうが、人工栄養であった子どもに比べて短かったと報告されています。その原因として、母乳中には母親から移行した免疫抗体が含まれていること、母乳を与えるときの乳児の姿勢の2つが考えられます。 母乳は乳児を立てた姿勢で抱いて飲ませますが、哺乳瓶の場合、多くは乳児を上向きに抱いて与えます。上向きの姿勢では、乳が中耳の中に逆流する可能性があります。
    乳幼児は成人に比べて耳管が太く、短く、中耳への傾斜も水平に近いために、逆流しやすくなっています。その結果、局所的な炎症を起こし、中耳炎を発症するものと考えられます。人工栄養における中耳炎の発症を極力抑制するためには、ミルクは母乳を飲ませるときと同様に、乳児を立てた姿勢で与えることが望ましいと考えられます。
    牛乳そのものを乳児期早期に与えることは好ましいことではありませんが、海外で6ヶ月齢から牛乳を与えた乳児と乳児用調製粉乳を与えた乳児の中耳炎の発症頻度が比較検討され、両者間では有意な差が認められなかったと報告されています。

  • 38.成長期の牛乳の摂取量は、身長の伸びに関係する?

    牛乳摂取が体格に与える影響(3年間の変化)

    身長の伸びは、両親からの遺伝が大きな要因といわれています。さらに成長ホルモンなどの内分泌、性成熟度などとともに、食生活も影響しています。 このうち身長と食生活の関わりについて、成長期の牛乳摂取が体格(身長、体重、肥満度)にどのような影響を及ぼしているかを追跡調査した結果があります。小学4年生から中学1年生までの3年間、122名の男女を対象に、牛乳の1日あたりの摂取量が500mL未満のグループ(A群)と500mL 以上のグループ(B群)に分けて、身長、体重、肥満度を測定しました。その結果、体重の増加量と肥満度は両群間に有意差は認められませんでしたが、身長は牛乳摂取量の違いで2.5cmも差が出ました。ニュージーランドやアメリカでも牛乳摂取量が身長と関係するとの報告があります。

  • 39.牛乳を飲むと太る?

    牛乳の摂取量と体脂肪率(中高生女子)

    中学生・高校生男女のべ6,000人を対象に、4年間にわたって実施された調査では、1日あたりの牛乳の摂取状況を①400mL以上、②200〜400mL、③100〜200mL、④100mL未満、⑤ほとんど飲まないの5グループに分けて検討した結果、男子では差がありませんでしたが、女子では牛乳摂取量の多いグループのほうが体脂肪率が低いという結果になりました。
    また、ダイエット中の女性で試験した結果、低脂肪牛乳を摂取する群の体脂肪の低下が牛乳非摂取群に比べて大きいとの報告もあります。さらにアメリカの女児で1日あたり3品目以上の乳製品を摂取した場合、BMIのZ値※および体脂肪が低かったとの報告もあります。
    ※Z値:標準偏差を一単位として表されたスコアで、平均値からの偏差を示します。

  • 40.妊娠・授乳期には積極的に牛乳を摂取したほうが良い?

    妊娠・授乳期には、すべての栄養素を十分に摂取することが必要です。中でも特に重要な栄養素は、胎児の骨格の材料となるカルシウムと、血液成分となる鉄分です。 胎児は母体から栄養分を吸収して成長しますから、母体から十分な栄養分が供給できないと、生まれてくる赤ちゃんの発育にも悪い影響が出てきます。
    妊娠・授乳期は母体のカルシウムが激しく流出する時期です。妊娠中は母体から胎児へ約30gのカルシウムが移行し、授乳期では母乳を通して1日約220mgのカルシウムが喪失します。 日本人の食事摂取基準(2010年版)では、妊娠・授乳期の付加量は設定されていませんが、十分なカルシウムの摂取が必要なことは変わりません。女性が主に妊娠、出産する年齢層におけるカルシウム摂取の推奨量は650mgですが、実際の摂取量は20歳代で平均約400mg、30歳代では約450mgと極端に不足していることがわかります(2010年国民健康・栄養調査)。牛乳・乳製品は、妊娠・授乳期におけるカルシウム摂取 の推奨量を手軽に毎日摂れる食品として最適と考えられます。

  • 41.高齢期の牛乳摂取にはどんな効果が期待できる?

    70歳時の牛乳飲用習慣別10年間の生存率

    牛乳を摂取することで高齢者の低栄養状態が改善され、QOLが向上し、寿命が延びるというデータが報告されています。 かつて粗食は長生きの秘訣だといわれてきました。しかし、高齢者にとって低栄養状態を続けることは、老化を促進させ 余命を縮める原因となり、QOLの低下を招きます。
    東京都老人総合研究所の疫学調査によると、東京都で 最も長寿命地域である小金井市の70歳以上の男性195名、女性225名を対象として、10年間追跡調査した結果、牛乳を毎日飲むグループはそうでないグループに比べて生存率が高い傾向にありました。 また、寝たきりの高齢者に多い床ずれの発症には、たんぱく質、エネルギーなどの低栄養状態が関与しています。手軽に良質のたんぱく質を摂ることのできる食品として、牛乳は床ずれ予防にも役立つと思われます。
    アメリカでは、中年以降の女性を対象とした疫学調査で、乳製品の摂取とメタボリックシンドロームとの間に負の相関がみられたという報告があり、乳製品の摂取がメタボリックシンドロームの予防や、高齢期の健康につながるものと期待されます。 老人保健施設で、通常の食事に牛乳200mLあるいは麦茶、またはジュース200mLを摂取した場合の高齢者に対する健康増進効果を調査した結果では、牛乳の継続飲用により栄養状態、皮膚の新陳代謝および腸内環境に関する改善傾向が認められ、むくみの改善が観察されました。
    高齢者ではエネルギー必要量は少なくなりますが、各栄 養成分の推奨量、目安量は大きく変わりません。より少ないエネルギー量で効率良く必要な栄養素を摂取するには、栄養素密度の高い牛乳は最適な食品といえます。また、高齢者では骨粗鬆症が増えてくるため、カルシウムの補給源と しても牛乳は有効です。

  • 42.更年期の骨粗鬆症を防ぐためには?

    更年期(一般的に閉経前後の各5年間、計10年間)に起こる更年期障害は、卵巣の働きが低下し、ホルモンバランスが崩れることが原因で起こります。
    思春期以後ずっと体をコントロールしていた女性ホルモンの分泌は、40歳代後半から50歳代の更年期に急激に低下します。 女性ホルモンのエストロゲンには、骨からカルシウムが溶出するのを防ぐ働きがありますが、更年期にエストロゲンが激減するため、骨量が減り骨粗鬆症の発症の危険率が高まるわけです。閉経前の骨量を100%とすると、50歳代では17.7%減少し、60歳代では25.6%、70歳代では30.4%も減少します。女性は男性に比べて、もともと骨量が少ないため、骨粗鬆症になる危険性が高いのです。
    牛乳や乳製品の摂取は閉経期以降の骨密度低下を抑制します。50〜69歳女性のカルシウム摂取の推奨量は1日あたり650mgですが、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(2011年版)では、骨粗鬆症や骨折の予防のため1日700〜800mgの摂取が勧められています。特に若い女性では、カルシウム摂取量が多いと骨密度が上昇する傾向がはっきりしています。残念なことに、閉経後はその効果が薄いようです。ですから、女性においては若年期に十分なカルシウムを摂取して骨密度を高くし、閉経期以降の急速な骨密度の低下を予防することが重要です。
    牛乳や乳製品は吸収率の高いカルシウムが豊富に含まれているので、牛乳・乳製品の摂取は、若年期の高い骨密度の獲得に寄与し、閉経期においても、その後の骨密度低下を抑制するとの報告があります。更年期の女性にとって牛乳・乳製品の摂取は、減少した骨量の回復を期待することはできませんが、骨量の減少を抑制することで骨粗鬆症の予防 に役立つでしょう。

  • 43.牛乳を摂取していると骨折しにくい?

    牛乳摂取頻度と骨の健康状態(女性・60歳以上)

    カルシウムの摂取不足は骨折の危険因子であるといわれ、若年者、高齢者を問わず、カルシウムの摂取量が少ないほ ど骨折率が高いというデータが出ています。
    1992年に発表された牛乳摂取と骨折の関係についての調 査結果では、骨折患者の約半数が牛乳を飲む習慣がなく、健康な人では半数が毎日飲んでいました。 また、米カリフォルニア大学の14年間にわたる追跡調査でも、50〜79歳の男女957名のうちカルシウム摂取量が多い群ほど骨折率が低いという結果が出ています。
    一方、小児の骨折に関するニュージーランドの調査では、牛乳嫌いの3〜10歳の小児は、骨の発育が悪く、身長も低く、18%が肥満でした。この調査に参加した小児の24%が、過去に骨折の経験がありました。この数字は、同じ年齢集 団の平均年間骨折率の3.5倍に達しています。

  • 44.アスリートにとって牛乳摂取のメリットは?

    トレーニング直後における自覚疲労度の推移

    スポーツ選手のようなアスリートにとって、筋肉づくりは非常に重要な課題です。筋肉づくりに必要な栄養素として、最近、分岐鎖アミノ酸( BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシンなど)が注目されています。
    分岐鎖アミノ酸の生理作用には、運動中の筋肉の消耗抑制、運動後の筋疲労の軽減などがあるといわれています。牛乳のたんぱく質に含まれる分岐鎖アミノ酸量は21.4%で、大豆18.5%、豚肉18.3%に比べて多く、アスリートにとって牛乳は有利なたんぱく質補給源といえます。
    日本人のアメリカンフットボール選手(平均26.9歳)38名を対象にした調査では、牛乳介入群(栄養指導介入を行い、牛乳を1日500mL、さらに週3回のトレーニング直後に500mL上乗せ摂取した)と、牛乳介入を行わなかった群(牛乳摂取量は平均1日117mL)に分けて比較した結果、牛乳介入群では骨密度、骨量、筋量が増加し、疲労度の減少 も観察されました。
    最近のアスリートはサプリメントに依存する傾向がみられ、サプリメントの過剰摂取による健康障害を危惧する声もあります。一方、牛乳は、良質なたんぱく質と豊富なカルシウムを安心して補給できる食品といえます。

  • 45.牛乳は1日のうち、いつ飲むのが効果的?

    牛乳はいつ飲んでもかまいません。目的に応じてお好きな時間にお飲みください。

    ①運動前後の飲用

    牛乳中のホエーたんぱく質に多く含まれる分岐鎖アミノ酸( BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)は、運動中の筋肉の消耗抑制、運動後の筋疲労の軽減などの働きがあるといわれ、特に激しい運動をするスポーツ選手のようなアスリートにとって、牛乳は有利なたんぱく質補給源となります。

    ②夜の飲用

    睡眠中は成長ホルモンの分泌が活発になるので、牛乳中のたんぱく質やカルシウムが骨や骨格を形成するのに役立ちます。特に成長期には効果的です。

    ③就寝前の飲用

    就寝前の飲用は睡眠の質を向上させるというデータがあります。また、カルシウムは神経の興奮性を低下させ安定化させる作用を担っています。ストレスからくるイライラや不安、緊張などは自律神経の交感神経優位のときに起こりがちです。こんなとき温めた牛乳は、適度に空腹感を満たし気分をリラックスさせて、安眠へ導いてくれるでしょう。

出典

社団法人 日本酪農乳業協会 牛乳・乳製品の知識