あなたにぴったりの牛乳は?

牛乳がわかるQ&A

牛乳と生活習慣病

  • 46.メタボリックシンドロームとは? 牛乳・乳製品の摂取との関係は?

    牛乳・乳製品摂取量とメタボリックシンドロームの関連

    メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積に糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などの状態がプラスされ、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発生リスクが非常に高まった状態をいいます。現在、わが国における該当者またはその予備軍は2,000万人近いとされ、2008年からは特定健康診査・特定保健指導の制度が始まっています。
    海外では、アメリカやイランでの研究で、乳製品の摂取量が多くなるにしたがってメタボリックシンドロームの発症率が少なくなるという報告がすでに出ていました。 日本でも、牛乳・乳製品を摂取する人はメタボリックシンドロームになりにくいという調査結果が発表されています。 (「牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドロームに関する横断的研究『」日本栄養・食糧学会誌』2010年)。
    上図は日本の研究結果を示しています。牛乳・ヨーグルト・チーズをカルシウム換算し、合計した1日の摂取量を女性で は①100mg 未満、②100mg 以上200mg 未満、③200mg 以上300mg 未満、④300mg以上の4グループに分け、メタボリックシンドロームの危険性(リスク)を解析したものです。
    ①のリスクを1とすると、女性では、②のオッズ比は0.57となり、リスクは40%ほど下がるという結果が出ました。カルシウム100〜200mgは牛乳にすると1/2〜1本くらいになります。男性では、カルシウム摂取量が増えるほどリスクが小さくなるという結果になりました。 牛乳・乳製品がメタボリックシンドロームを抑制するメカ ニズムとしては、牛乳・乳製品の摂取により「利用可能なエネルギーが減少し、消費エネルギーが増加する」という仮説 があります。これは、体脂肪が減少するメカニズムといえます。 利用可能エネルギーの減少とは、例えば牛乳1本を飲む ことで満腹感が増し、その後の食事の量が減るというようなことです。また、カルシウムと脂肪酸が消化管の中で結合することにより脂肪の吸収が抑えられると考えられています。
    消費エネルギーの増加とは、脂肪細胞での脂肪分解が進む、脂肪合成が抑えられる、食事誘導生産熱が高まる、脂肪が分解される方向へシフトしていく、というようなことです。基礎代謝が高くなるというデータもあります。 また、血圧に関しては、牛乳はカルシウムを多く含む食品であり、カルシウムが血圧を低下させることが以前から知られています。また、牛乳に含まれるカゼインやホエーたんぱく質が消化管で分解される際に生成するペプチドには降圧作用を有するものがあることも知られています。

  • 47.成長期の牛乳の摂取量は、身長の伸びに関係する?

    「米飯と牛乳」のGI

    G(Iグリセミック・インデックス)は、食後の血糖値の変化を示す指標のひとつで、「同量の糖質摂取でも素材やその組み合わせにより血糖値への影響が異なる」という食後血糖値上昇反応に注目した考え方に基づき、糖尿病の食事指導にも活用されています。 GIは、ブドウ糖(グルコース)摂取後2時間の血糖上昇曲線下面積( IAUC)を100としたときの、各食品のIAUCの比率で示されます。
    牛乳、ヨーグルトのGIは27、スキムミルクは32です。一般に低GI食は72以下とされていますから、かなり低い値を示す低GI 食品といえます。 日本では米飯を基準食(GI:100)に設定して、各食品のGIを算出しています。米飯単独ではGIは100ですが、牛乳と米飯を組み合わせると69に、米飯を摂取する前にヨーグルトを摂ると72に下がります。また、パン単独では92ですが、チーズと白パンでは71になります。このように牛乳・乳製品と組み合わせることでGIが下がるのは、牛乳のたんぱく質や脂質が胃の中で糖質の消化吸収の時間を遅延させ、血糖値の上昇を抑えるように働くためと考えられます。
    肥満に関する研究で、低GI食は満腹感を延長させ食物摂取量を減少させるという報告が、逆に高GI食は肥満を促進するという報告が出されています。GIの低い牛乳・乳製品は、食後血糖値の上昇を抑え、体脂肪の蓄積を抑制するため、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防・改善につながる優れた食品といえます。

  • 48.インスリン抵抗性症候群とは? 牛乳との関係は?

    牛乳の摂取量と体脂肪率(中高生女子)

    膵臓から分泌されるインスリンは、筋肉や脂肪細胞などの細胞に働きかけ、細胞内に糖を取り込ませることで、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を低下させます。しかしインスリンの働きが悪くなると、スムーズに糖を細胞内に取り込めなくなり、血糖値が下がらない現象が起こります。この状態をインスリン抵抗性症候群といいます。
    インスリン抵抗性症候群を放置しておくと、糖尿病を発症するだけではなく、高血圧や脂質異常症とも深く関与するといわれています。肥満やインスリン抵抗性症候群と関連して糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併して発症する状態を「メタボリックシンドローム」と呼び、心筋梗塞、脳梗塞のハイリスク群として捉えられています。
    牛乳・乳製品の摂取頻度とインスリン抵抗性症候群の関係について、アメリカで18〜30歳の若年成人3,157人を対象に行われた調査では、牛乳・乳製品の摂取によってインスリン抵抗性が改善されるという報告が出されています。肥満( BMI≧25)症例では、乳製品を1日5回以上摂取するグループは、1日1.4回以下しか摂取しないグループに比べて、インスリン抵抗性症候群の発症率が71%も低くなりました。さらに、1日の牛乳・乳製品の消費回数が1回増えるごとに、インスリン抵抗性症候群の発症率は21%に低下しました。このメカニズムについてはいまだ解明されていませんが、牛乳・ 乳製品を積極的に摂取すると、インスリン抵抗性症候群になりにく 、糖尿病の発症を予防することが期待できます。

  • 49.牛乳はがんの発生に関連がある?

    牛乳の摂取により、胃がんだけではなく、大腸がん、乳がんの発生率が低下するという疫学調査が報告されています。牛の成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF-1)、および性ホルモン(エストロゲン)のような生理活性物質が乳がんの発症に関連しているとの説もありますが、牛成長ホルモンはヒトでは活性がなく、また、牛乳由来のIGF-1、エストロゲンは女性が生体内で内因性に分泌する量と比較するとごく微量です。また、牛乳の脂肪に含まれる共役リノール酸(CLA:9シス、11トランス体)には、乳がんの発生を抑制する働きのあることが、海外で実施された動物実験で確かめられています。さらに悪性黒色腫、結腸・直腸がん、肝がん、肺がん、前立腺がんに対して、共役リノール酸が抑制効果を示すというデータも報告されています。
    乳清たんぱく質は、シスチン/システインとγ-グルタミルシステインペプチドを含み、これらは、グルタチオンの生合成の基質として有用であり、活性酸素種を破壊し、発がん物質の発がん作用をなくしてしまうため、がんの発症予防に関連すると考えられています。一方、乳製品の摂取が、一部のがんのリスクを増加させるとの報告もあります。これらについては今後の評価が必要と考えます。

  • 50.牛乳は動脈硬化、心疾患の原因になる?

    心疾患(心筋梗塞)は血管の病気で、主に動脈硬化によって発症します。したがって心疾患にならないためには、動脈硬化の進展を予防することが必要です。 乳製品を含む食事と動脈硬化、心疾患の関係について、日本や欧米で多くの疫学調査が実施され、牛乳・乳製品は 心疾患のリスク要因ではないと報告されています。
    日本人を対象として行われた、乳製品の摂取と心疾患の関係を調べた研究では、乳製品を摂取する量が最も多いグループで、心疾患の発症リスクが低い傾向にありました(下図参照)。
    この研究では、1988〜1990年にかけて約11万人の40〜79歳の日本人を対象としてライフスタイルと過去の心疾患、およびがんの既往歴に関するアンケートを行いました。このうち病歴のない53,387人について、乳製品摂取と心疾患との関係を調べました。その結果、乳製品を摂らないグループの発症リスクを1.0とすると、乳製品の摂取量が最も多いグループ(乳製品由来のカルシウム量換算で、男性で1日128mg 以上、女性で1日144mg 以上)では、心疾患の発症リスクは男性0.73倍、女性0.77倍と低くなりました。

    70歳時の牛乳飲用習慣別10年間の生存率
  • 51.カルシウムが血圧を下げる?

    古くから飲料水の硬度(硬度が高いほどカルシウムの含有量が多い)と心血管合併症の死亡率との間に密接な関係があることが報告されてきました。 また国内外の疫学調査で、カルシウムの摂取量の少ない地域では高血圧の人が多いという報告も出ています。 米国の調査では、高血圧例は、カルシウム摂取量が1日あたり300mg 以下では11〜14%、1,200mg 以上では3〜6%でした。このことからカルシウムの摂取量が高血圧の発症に深く関与していることが示唆されました。 日本でも、東北地方で実施された疫学調査で、カルシウムの摂取量が少ないと高血圧や脳卒中の発症が増加するというデータが報告されています。これらの調査から、1日のカルシウム摂取量が400〜500mgより少ない場合には、高血圧の発症頻度が上昇する可能性が高いと指摘されています。

  • 52.乳製品からのカルシウム摂取は脳卒中のリスクを低減させる?

    厚生労働省「多目的コホート研究( JPHC 研究)」によると、乳製品からのカルシウム摂取量が多いと脳卒中、脳梗塞などの発症リスクが低下することがわかりました(下図参照)。この研究では、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県の40〜59歳の男女で、循環器病、がんに罹患していなかった約4万人について、食事や生活習慣についての調査を行いました。そこから総カルシウム摂取量、牛乳・乳製品からのカルシウム摂取量、大豆製品や野菜などの乳製品以外からのカルシウム摂取量を算出し、約13年間の追跡期間中に発症した脳卒中、虚血性心疾患との関連について報告しています。それによると、追跡調査中に脳卒中を発症したのは1,321人(うち、脳梗塞664人、脳出血425人)、虚血性心疾患は322人でした。
    総カルシウム摂取量によって5つのグループに分け、脳卒中、虚血性心疾患の発症リスクとの関連を調べた結果、総カルシウム摂取量の最も多いグループ(1日753mg)では最も少ないグループ(1日233mg)に比べて脳卒中の発症リスクが0.7倍と低いことがわかりました。 次に、乳製品からのカルシウム摂取量も同様に調べた結果、最も多いグループ(1日116mg)では最も少ないグループ(ほとんどゼロ)に比べて、脳卒中の発症リスクが0.69倍と低いことがわかりました。
    一方、乳製品以外からのカルシウム摂取の場合では、摂取量が増えても脳卒中の発症リスクに統計学的に有意な低下はみられませんでした。日本人では総カルシウム摂取量や乳製品からのカルシウム摂取量が多い人は、少ない人に比べて血圧値が低いことが、これまでの研究により明らかとなっています。また、カルシウム摂取は血小板凝集やコレステロールの吸収を抑えることも 報告されており、これらが脳卒中に対して予防効果を示した 理由と考えられます。

    乳製品からのカルシウム摂取量と脳卒中発症との関係
  • 53.胃・十二指腸潰瘍には牛乳を積極的に摂取したほうが良い?

    胃・十二指腸潰瘍は、食物を消化するために分泌される胃酸によって、胃や十二指腸の粘膜が傷害されて部分的に欠損状態になり発症します。胃粘膜には粘液や粘膜バリア、粘膜血流などの防御因子といわれる粘膜を守る機能が備わっています。一方、胃粘膜を攻撃する因子には、胃酸、ストレス、ピロリ菌、薬剤(解熱鎮痛消炎剤等)、活性酸素な どがあります。この防御因子と攻撃因子のバランスが崩れることによって、潰瘍が発症するといわれています。潰瘍は薬物治療によって治りますが、再発を繰り返すことが知られています。最近はピロリ菌の感染が注目され、ピロリ菌を除菌すると潰瘍の再発率が低下すると考えられています。
    たんぱく質は胃酸の分泌を促し、胃の中での停滞時間が長いため、一般的に潰瘍の患者さんには控えたい栄養成分です。しかし、たんぱく質は粘膜の修復に必要な材料になるため、適量の摂取は必要です。牛乳には胃酸を中和して胃粘膜を保護する働きがあり、潰瘍の患者さんも安心して摂 取できる食品です。また牛乳のカルシウムには、胃粘膜の攻 撃因子となるストレスを和らげる働きがあるといわれています。ただし、牛乳が他の食品に比べてより高い効果があるかどうかは明確にされていません。
    胃の切除手術をすると、カルシウムの吸収率が低下します。したがって術後の患者さんにとってカルシウムの消化・吸収の良い牛乳は最適な食品です。また牛乳に含まれるホエーたんぱく質の成分が胃潰瘍に対し予防効果のあることが動物実験で認められています。以前から牛乳の胃潰瘍予防効果は予測されていますが、その効 果はいまだ明確にされていません。今後の検証が必要です。

  • 54.肝臓病には牛乳を積極的に摂取したほうが良い?

    肝臓病の食事療法は「適正なエネルギー摂取のもと、栄養バランスの取れた食事」が基本とされています。慢性肝炎の食事療法の一例では、普通食を基本にした食事を3食規則正しく摂り、その他に1日コップ1杯の牛乳摂取が推奨されています。 慢性肝炎になると、肝臓のたんぱく質不耐症により血清芳 香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)が増加する一方、筋肉での分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の取り込みや代謝の亢進などにより血清分岐 鎖アミノ酸が減少し、さまざまな障害を引き起こします。
    その予防には、Fisher比(分岐鎖アミノ酸/ 芳香族アミノ酸)の高いたんぱく質の摂取が有効です。肝臓病の食事療法で、たんぱく質源として肉や魚よりも牛乳が推奨されるのは、牛乳のホエーたんぱく質が、食品たんぱく質の中で最も Fisher比が高く、より少ない量で必要分をまかなうことができるためです。
    肝臓病では鉄分の摂取を極力控えるように指導されます。牛乳の鉄分の含量がとても少ないということは、鉄分の少ないたんぱく質源として極めて有用といえるでしょう。 たんぱく質の栄養価は必須アミノ酸の量、およびバランス が大きく関係しています。牛乳は卵に次いで栄養価の高いたんぱく質を含んでいますが、あくまで栄養バランスを良くして、肝臓に負担をかけない食品のひとつとして摂ってください。

  • 55.乳製品は痛風の予防に効果がある?

    痛風は高尿酸血症ともいわれ、血液中に尿酸が増えることにより起こります。尿酸値は、激しい運動やストレスなどで体内で多く生成されたり、プリン体を多く含む肉類、貝類、ナッツ、かまぼこなどの過剰摂取によって上昇します。牛乳にはプリン体はほとんど含まれていません。尿酸は、健康な人では溶けた形で血液中に存在しますが、過飽和濃度の状態になると結晶を生じ、関節などに沈着した場合に激しい痛風発作を起こします。
    痛風は男性に多く発症する炎症性関節炎で、アメリカでは340万人の患者がいるといわれています。痛風の既往歴のない男性(40〜75歳)約47,000人を対象に、摂取した食品と痛風の発症の関係について12年超にわたる疫学調査が米国で実施されました。この調査では、プリン体を多く含む肉類、魚貝類などと、乳製品の摂取量 を各5段階のグループに分け、痛風の発症のリスクを検討し ました。その結果、プリン体を多く含む肉類、魚貝類では、摂取量が最も多いグループは最も少ないグループよりも痛風発症のリスクが高いという結果が出ました。一方、乳製品では、摂取量が増えるにつれて発症リスクが低下しました。痛風発症のリスクは、乳製品の摂取量が最少のグループを1とすると、最大グループでは0.56でした。乳製品が痛風の発症を抑制するメカニズムは、乳製品に含まれるたんぱく質(カゼインとホエーたんぱく質)の尿酸排泄促進作用により、血液中の尿酸値を下げているためと考えられます。

  • 56.牛乳の摂取は虫歯予防に効果がある?

    う蝕(虫歯)予防的効果を示す食品として、WHOの報告では、牛乳が「可能性あり」の食物として記載されています。また、硬質のチーズは「可能性が高い」食物として記載されています。 牛乳・乳製品が効果を示す要因として、①う蝕原因菌の産生した酸を中和する、②唾液分泌の促進、③歯の表面へのバイオフィルムの形成阻止、④カゼインやイオン化した牛乳中のカルシウムとリンによるエナメル質の再石灰化の促進が考えられます。 カゼインの酵素分解物カゼインホスホペプチド(CPP)とリン酸カルシウムの結合物(CPP-ACP)を牛乳に加えた試験ミルクが、ヒトでのう蝕予防に効果を示した報告があります。また、英国の青少年の牛乳の摂取量とう蝕の発症は反比例の関係にあるという報告も出されています。

  • 57.牛乳の摂取は歯周病の予防に効果がある?

    歯周病と食生活の関係では、歯と歯茎の栄養に不可欠なたんぱく質、ビタミンCなどの抗酸化ビタミン類、ミネラルとして骨形成に重要なカルシウム、リンとビタミンD、ビタミンKや食物繊維を含む硬い食物が適しています。カルシウムの摂取不足は、骨密度低下の一因であり、全身の骨密度は顎顔面の骨密度、歯槽骨破壊とも関係しています。歯周病は細菌による病気ですが、カルシウムの摂取不足は顎骨、歯槽骨での骨代謝に影響して歯周病を進行させます。 牛乳・乳製品の摂取増加は歯周病を予防する効果があるとの報告があります。牛乳、チーズ、乳酸菌発酵乳の摂取 量で比較した福岡県・久山町での疫学研究では、ヨーグルトなどの発酵乳の摂取が最も効果的であったと報告されています。

出典

社団法人 日本酪農乳業協会 牛乳・乳製品の知識