あなたにぴったりの牛乳は?

生活習慣病予防と牛乳の役割

生活習慣病とは

日本人の平均寿命の推移

日本は世界一の長寿国

日本人の平均寿命(余命)は戦後の1949年から年々延び続けています。世界保健機関(WHO)の発表(2011年)によると、日本人の男女の平均寿命は約83歳で、WHO 加盟193カ国のうち1位となっています。
この背景には、戦後、学校給食への牛乳供給をはじめとして、家庭配達制度の普及、店舗展開による飲用機会拡大、料理への利用の普及など、60年以上にわたり牛乳が普及してきたことも大きいと考えられます。

年齢別にみた通院者率(人口千対)

生活習慣病とは

長寿の一方、日本では生活習慣病にかかる人が増えており、65歳以上では約6割以上の人が通院を必要とする疾病を抱えています。
生活習慣病とは、不適切な食生活や運動不足、過度の飲酒や喫煙、ストレスなど、生活習慣が深く関わって発症する高血圧、脂質異常症、糖尿病、骨粗鬆症などの疾患の総称です。牛乳は、エネルギー量の低い割には栄養素密度が高く、生活習慣病改善に役立つと注目されている食品です。そこで、食生活に牛乳を上手に取り入れ、どのように生活習慣病を予防し、改善していくかについて考えていきます。

死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移

生活習慣病と牛乳

高血圧と牛乳

高血圧は日本人に多い生活習慣病で、その原因は遺伝因子が強いといわれていますが、現代では肥満も大きな原因です。
そのため食事を含めた生活習慣が大きく影響するといわれています。高血圧を改善する食生活のポイントは2つあり、1つは塩分、もう1つは体重のコントロールです。塩分については、食塩相当量として、日本では男性9.0g/日以下、女性7.5g/日以下と目標量が定められていますが、WHOのガイドラインでは、高血圧の予防と治療のための指針として6.0g /日未満を勧めています。(欧米でも6.0g / 日以下を推奨)。
牛乳をしょうゆやみそベースの和食などに使えば減塩は効果的で、牛乳をだし代わりに使うことでしょうゆやみその量を控えてもコクやうまみが出て、もの足りなさを感じさせません。具に野菜をたっぷり使えば、牛乳のカリウムに野菜からのそれが加わり、ナトリウムの排泄効果が高まります。また、牛乳に含まれるカルシウムは、血圧のコントロールに直接役立つので、その補給源としても欠かせない食品です。

脂質異常症と牛乳

脂質異常症には、コレステロール値が高い、中性脂肪が多いなどの症状 があり、年齢に関係なく10代の若者で も起こることが明らかになっています。 日本人にこれほど脂質異常症が増えたのは、食事の外食化や中食化に伴う栄養のアンバランス、肥満の増加などが原因とされています。
コレステロールの上昇は油脂、中性脂肪はアルコールや甘いものの過剰摂取が問題とされていますが、特に脂質異常症が若年齢化しているのも、糖分の多い清涼飲料やアルコール飲料の摂 りすぎが原因で、清涼飲料を牛乳に変えるだけでも予防効果が期待できます。
料理にも、例えばクリーム煮、グ ラタン、スープなどに牛乳を使えば、低脂肪・低塩分でコクのある味が楽しめます。甘いものが欲しいときはプリ ンやブラマンジェなどに牛乳を使えば、糖分控えめでおいしいデザートが楽しめます。

糖尿病と牛乳

牛乳・乳製品のGI値

糖尿病は、日本人に多い病気の1つです。2011年のデータ(国際糖尿病連合)によると、日本の糖尿病人口は1,067万人。「2010年国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、60歳代男性の5人に1人以上であることがわかりました。糖尿病は直接の死因にはなりませんが、網膜症や神経障害、腎症、動脈硬化の促進など、さまざまな合併症が起こることがわかっています。
糖尿病の予防と改善には、血糖値の急激な上昇を防ぎ、低エネルギーで吸収速度の遅い食事をすることが大きなポイントです。
近年、血糖値の変化を示す指標「グリセミック・インデックス(GI)」が注目されています。

糖尿病が強く疑われる人の割合(2002年と2010年の比較

GIは、ブドウ糖(グルコース)摂取後2時間の血糖上昇曲線下面積(IAUC)を100としたときの、各食品のIAUCの比率で表します。
GIの低い食品は、食後血糖値の上昇を抑え、糖尿病の予防・改善につながる食品といえます。日本では米飯を基準食( GI:100) に設定して、各食品のGIを算出しています。
脂肪や食物繊維を多く含む食品は一般的に低GI食品ですが、脂肪が多い食品は高エネルギーであることが難点です。 その点、牛乳は脂肪がそれほど多くなく、GIも27と非常に低い優れた食品です。

骨粗鬆症と牛乳

男女における骨量の経年変化

女性の要介護の原因は、脳血管疾患に次いで骨折、転倒の順ですが、その理由として女性は閉経後、骨粗鬆症が急増するためと考えられます。骨粗鬆症は、骨の主成分であるカルシウムの不足が最大の原因ですから、生理的に不足するカルシウムをしっかりと補給することが必要となります。
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(2011年版)では、成人女性に必要なカルシウム摂取量は1日700〜800mg以上が理想とされていますが、カルシウムはもともと吸収されにくい栄養素です。特に吸収率が低下する中高年では、吸収しやすい食品を選ぶことが大切です。
牛乳は100g 中に110mgものカルシウムを含み、さらにカルシウムの吸収を促す乳糖を含みます。また、牛乳のたんぱく質が分解される過程で生じるカゼインホスホペプチド(CPP)もカルシウムの吸収を助けます。また、骨の形成に必要とされるたんぱく質やリンなどもバランス良く含まれています。
カルシウムは、ビタミンDやKを含む食品と一緒に摂ると吸収がさらに促進されます。ビタミンDはサケやサンマなどの魚介類に豊富です。
魚介類を使ったグラタンやクリーム煮は、カルシウムとビタミンDが一緒に取れるため効果的な献立です。ビタミンKは納豆や青菜に多く含まれています。これらの食材を使って牛乳をだし代わりにみそ汁や卵焼きを作れば、コクのある味わいを楽しむこともできます。
逆に取り過ぎに注意したいのが、リンです。リンはカルシウムに対して体内に過剰にあると、カルシウムの排泄を促してしまいます。リンは、肉や魚、牛乳など動物性食品には必ず含まれています。牛乳はカルシウムとリンがほぼ理想的な比率(1:1)で含まれていますが、肉はカルシウムがわずかしか含まれていませんので、肉食に偏るとリンの過剰摂取になる可能性があります。
また、清涼飲料や練り製品にも食品添加物と してリンが多用されていますので、これらの過剰摂取にも注意しましょう。

動脈硬化と牛乳

動脈硬化とは、動脈壁が硬く、内腔が狭くなって、血液が十分に流れない状態をいいます。
動脈硬化を防ぐには、高血圧症、脂質異常症、糖尿病を予防・改善することが一番ですが、カルシウムを十分に摂取することも予 防になります。カルシウムは動脈硬化の促進因子を阻害し、高血圧の予防 にも貢献するので、カルシウムを多く含 む牛乳の摂取は、動脈硬化の二重三重のガードになります。
さらに、血流を良くする成分を摂ればより効果的です。抗酸化作用のあるβ-カロテンやビタミンC、ビタミンEを含む緑黄色野菜、血小板の凝集を妨げる大豆、エイコサペンタエン酸(EPS)やドコサヘキサエン酸(DHA)の豊富な青背魚などを牛乳と一緒に摂り、低エネルギーの調理を心がけましょう。

がんと牛乳

牛乳の摂取量別の大腸がんの発生リスク

現在の日本人の死因の最多は悪性新生物(がん)であり、私たちの身の回りには発がん物質とされるものがたくさんあります。しかし、発がん物質の攻撃を受けた細胞がすべてがん化するわけではなく、人体に備わっている防御機能が活発に働いていれば、がん化を食い止めることができます。
その防御機能の強弱を左右するのが生活習慣で、中でも食生活は大きく影響します。がん化した細胞を破壊するのはナチュラルキラー(NK)細胞と呼ばれる白血球で、NK細胞の活性を高めるのがサイトカインという免疫関連物質(ペプチド)です。
牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインには、免疫系を活性化する働きがあり、サイトカインの産出を促す効果もあるので、がん予防の効果が期待されます。また、かぼちゃやブロッコリー、ト マトなどに含まれる抗酸化ビタミンや抗酸化物質、あるいは食物繊維を一緒に摂ることで、いっそう免疫力をつけ、がんを防ぐことができます。欧米の5カ国(米国、カナダ、オランダ、スウェーデン、フィンランド)で男女53万人を対象に行われた疫学調査では、牛乳の摂取量が多いほど大腸がんの発生リスクが低くなるという結果が出ました(2004年)。

肝臓病と牛乳

肝臓は、栄養成分を受け取る、エネルギーを生み出す、体に必要な形に再合成して送り出す、体内で不要になった成分を排泄する、有害物質の解毒作用など、まさに肝心かなめの臓器です。
アルコールの飲み過ぎなど、生活習慣により肝臓病が起こります。飲み過ぎれば誰にでも起こる脂肪肝に始まり、飲み続けることでアルコール性肝炎に至ります。さらに飲み続けていると肝硬変という最終段階になり、治すのが難しくなります。これらの病気を予防するには、アルコールや炭水化物、特に糖質過多の清涼飲料や菓子類を控え、エネルギーや脂質の過剰摂取を改め、その上で良質のたんぱく質、ビタミン類が不足しないようにすることが大切です。
これらの栄養素を過不足なく摂取し、バランスの良い食事に一役買うのが牛乳です。栄養素密度が高く、良質のたんぱく質や、脂質の代謝に必要なビタミンB群が効率良く摂れるので、ぜひ習慣化して飲用することをおすすめ します。

出典

社団法人 日本酪農乳業協会 牛乳・乳製品の知識